SMA症候群の怖さ|健康的なランニングのために

私は医師ではありませんが、SMA症候群(上腸間膜動脈症候群)について書いておこうと思います。
このブログで幾度か、女子長距離選手に対する厳しい体重管理、無月経や摂食障害の問題について取り上ましたが、SMA症候群もまた、過度な体重管理や激しい運動によって起こる症状であるからです。

長距離のトレーニングで合宿を行うと、運動量が普段よりも格段に多くなります。
1週間で400㎞以上走りこむこともあるでしょう。
本格的に長距離を競技としてやってきた女子選手であれば、運動量が多い時期や減量中、食事の後に吐き気がする、胃もたれする、腹痛がある…こんなケースを体験した方も多いのではないでしょうか。
運動量が増えている時なら「内臓疲労」、減量中や体重管理が厳しいと「摂食障害」を疑ってしまいがちですが、もう一つ、SMA症候群の可能性を念頭に置いておく必要があります。

SMA症候群とは、十二指腸を上腸間膜動脈という血管が圧迫することで起きる病気です。
十二指腸は上腸間膜動脈と腹部大動脈との間にあります。
二つの動脈の間には内臓脂肪があるので、通常であれば十二指腸は内臓脂肪の中に浮いている状態になります。
ところがこの部分の内臓脂肪がなくなってしまうと、十二指腸が押しつぶされてしまい、食後の吐き気や腹痛といった症状が出てきます。
SMA症候群の怖さ|健康的なランニングのために
もうお分かりだと思いますが、内臓脂肪が極端に減ることで起きる病気です。
やせ型の若い女性に多い病気で、体脂肪を気にしているアスリート、糖質制限ダイエットを続けている人は注意が必要です。
突然激しい腹痛と嘔吐に襲われることもあって、その場合は救急車を呼ぶことになるかもしれません。

この症状に実際になったことがあるランナーもいます。
ウルトラマラソンの日本代表になったこともある兼松選手です。
当時の様子を記事「体重減少が招いた緊急事態」に残してくれているので参考になると思います。

この症状に陥ったら先ずは休むことです。
そして糖質と脂質が豊富で消化によいものを摂取することを心がけます。
女子長距離選手の場合、太ることを気にして、休んだ上にさらに食べることに罪悪感を抱く人もいるでしょうが、吐き気や腹痛が出てきた時点で休息することが大事です。
兼松さんのように急激に悪化することもありますし、その状態で我慢して練習を続けても競技力の向上に繋がるとも思えません。
症状が軽度であれば、練習を軽くするのも良いかもしれません。
ちょっと胃もたれする、胃がキリキリするという程度だと「内臓疲労かな?」と思うくらいでしょう。
この時点で練習を軽めにし回復に努めるという選択もアリだと思います。
内臓脂肪は悪者扱いされがちですが、「減りすぎても怖い」ということを念頭に体調管理をしたいものです。

最近の大阪国際女子マラソンなどを見ると、3時間前後で走る市民ランナーが随分増えたなという印象を受けます。
走り方を見ると、ほとんどのランナーにスピードが備わっていないことがわかります。
にも拘わらず3時間前後で走るのですから、相当走りこんできているのでしょう。
市民ランナーにも予備軍は多いのかもしれません。


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