接地の重要性|ジョグはすべての基本

ランニング、スプリント…どちらも基本はジョグにあります。
速い遅いに関係なく、ジョグが上手くできないと効率よく走ることが出来ません。
不思議なもので、ある程度のタイムで走る人であっても、ジョグが上手く出来ていない人を結構見かけます。
ですがある程度以上のタイムで走る人を見ると、ジョグが下手な人はほとんどいません。
「ある程度のタイム」は種目ごとに変わるのですが、例えばマラソンなら、男子は2時間20分、女子は2時間40分以内で走る人、またはその力がある人。
このレベルにあるほとんどの人はジョグが上手です。
短距離や跳躍選手も同様です。
奥山義行さん、井上悟さん、森長正樹さん、宮田英明さん(日大の先輩しか挙げていませんが…)、一流選手は今も昔も何気ないジョグが本当に綺麗です。
また70代のランナーや4時間でフルマラソンを走る人の中にも、とても綺麗なジョグをしている人がいます。
そういう人の走りを見ると「しっかり走れてすごいな」と感心してしまいます。

さて、このジョグで最も大事になるのが「接地」です。
最近、長距離走において、踵から地面に着地する「踵着地」が良いか、足の前の位置から着地する「フォアフット」が良いのか、あるいはまた真中から着地する「ミッドフット」が良いかという議論があります。
しかし大事なのは「どこから着地するかではなく、どこに着地するか」です。
ここでいう着地とは「足の裏全体が接地している状態」を指します。
そして足の裏全体が接地している場所で望ましいのは「体の重心の真下かその少し前」です。
速い遅いに関係なく、しっかり走れる人は例外なくここに着地します。

先ず、ユニクロの林田玲奈さんのジョグを見てみます。
接地の重要性|ジョグはすべての基本
林田さんは、踵から着地するランナーです。
画像は試合前、アップ中のジョグです。
真ん中、林田さんの体の軸に縦線を入れてみるとその真下で足裏全体が接地していることが分かります。
重心の真下に着地することが出来ると、地面からの反発力を最大値で得ることが出来ます。
左上に弾むように矢印を入れてみました。
ボールが前に弾むのと同じようなイメージです。
反発力を最大限に活かせると、膝がスムーズに前に出ます。
この接地が重心より後ろになってしまうと、足が後ろに流れている状態になってしまい、膝が上がりません。

では踵着地ではなく、ミッドフットやフォアフットの場合はどうか?
今度は大森郁香さんで見てみます。
接地の重要性|ジョグはすべての基本
こちらは練習前のアップ中です。
画像右端を見てわかるように、大森さんはミッドフット(少しフォアフット気味)で接地します。
そして足裏全体が接地する場所は、重心の真下より少し前です。
踵着地の林田さん、ミッドフットの大森さんのどちらも、重心の真下に着地していることが分かります。
もちろん二人とも「しっかり走れる人」です。
この位置に着地できれば、踵着地、ミッドフット或いはフォアフットでも問題はありません。
極端な踵着地にはなりえないし、つま先だけで走ることもないからです。
ただし、短距離、中距離の場合は別です。
人は速く走ろうとすればするほど、足の前の方から接地します。
スプリント種目では、踵から着地することはまずありえません。
スプリント種目を専門にしたいと考えるのなら、大森さんのようなジョグが出来るようになる必要があります。

スコット・ジュレクの言葉を借りれば、ランニングは「コントロールの効いた落下」です。
人間が走るとき、地球と接するのは足の裏のみです。
画像にはボールが弾むイメージで線を入れました。
同じ力で投げたボールであっても、落ちる場所が違えば弾む距離も変わります。
ランニングも同じです。
重力をコントロールしようと思えば、どこに接地するかがとても重要になります。

陸上競技を始めたばかりの中高生であれば、先ずはジョグの接地が上手く出来るようになることが大切だろうと思います。
接地を意識した動きづくりや、補強などで体幹を鍛えること。
そしてジョグでは、ダラダラ走ったり誰かとお喋りしながら走るのではなく、集中してしっかり走ること。
大森さん、林田さんを見ても分かりますが姿勢を正してしっかり走っています。
自分のフォームに集中したジョグを丹念に行えば、自然とリラックスしたフォームで走れるようになります。
そうなると、自分の重心を捉え、着地する場所を手に入れているはずです。
その走り方こそがその人の個性だと言えるでしょう。
「走った距離は裏切らない」と言った人がいますが、走った距離は嘲笑うかのようにランナーを裏切ることがあります。
でも一度捉えた自分の重心がランナーを裏切ることはありません。
手に入れた自分の個性を信じるべきです。



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