800mで2分を切るために

800mで2分を切ることは、マラソンをサブ3で走るよりもはるかに難しいといえます。
マラソンは40代でもサブ3で走る人を見かけるけれど、800の場合は30代で2分を切る人が極端に減り、40代ではほぼいなくなります。
ただでさえ簡単ではない上、達成できる年齢の幅も狭いのが2分切りです。

2分を切るには、男女ともほぼ同じ条件が必要です。
そもそも女子の日本記録は2分00秒45なので、まだ誰も1分台で走っていませんが、その可能性を秘めた選手はこれまでにもいました。
例えば日大を卒業した頃の大森郁香さん。
800mで2分を切るために
大学4年生の頃に出したベストは2分3秒96。
急成長中でしたので、環境が整っていればさらに更新することも予想できました。
もちろん、北村夢さん、塩見綾乃さんなど他にも数名います。
特に塩見さんは最初から前に出るタイプですので、挑戦しやすい展開で走れることでしょう。
新しい風景というものは、冒険する者しか見ることが出来ない…私はそう思います。

さて、800mを2分切るための条件として先ず考えられるのは、400mを53秒前後で走ること。
コンスタントに53秒台で走ることが出来れば、800mの1周の目安として、57~58秒で走ることも可能になるでしょう。
1周目がなければ2周目はないので、800の場合、先ずスピードが必要になると考えて良いです。
当然ではあるけれど、53秒台のスプリントを手に入れるには100m、200mのタイムを上げなければなりません。
個人的には、重要なのは200mではないかと考えています。
コーナースタートで上手く加速できることは400、800では大きな武器。
またコーナーリングが上手だということは、柔らかいスプリントが出来ていることでもあります。
中距離選手にとって「柔らかいスプリント」は最も重要な素質ではないでしょうか。
100mのタイムの2倍より200mのタイムが良いタイプ。
或いは100mより200mが好き、でもいい。
そういうスプリンターである必要があります。

スプリントを手に入れたら、次の課題はスタミナ。
400mをイーブンペースのまま57秒で走り、さらに400mを63秒以内で走るスタミナが必要です。
私の場合は、1周目を57'0、2周目を61’8で走りました。
高校3年生の記録会で出したタイムが1分58秒8、これが最初の1分台でした。

さて、スタミナを確認するには、普段の練習を終えた後、1000mのタイムトライアルを行うと良いでしょう。
練習の後、疲労もある状態でコンスタントに2分40秒を切ることが出来れば、2分を切るための最低条件をクリアしたと言えます。
男子に限って言えば、実のところ、長距離練習だけでも2分を切ることは出来ます。
ただし、高校駅伝の強豪校と同等の走り込みが必要です。
駅伝のための練習だけで1000mを2分40秒以内で走れるようになってしまえば、2分を切る可能性は高い。
反面、長距離練習で得たスピードは、スプリント力とは少し異なるので、さらに記録を伸ばすのは困難であるケースも多い。
高校駅伝や箱根駅伝を走りながら800mでも好記録を出していた選手は昔からいるけれども、一部の人に限られてくると思います。
スプリントとスタミナ、両者を維持しつつ伸ばすには、坂道ダッシュなどの短距離練習、インターバルやタイムトライアル、長い距離のジョグやペース走など、それぞれを上手く組み合わせて行わないと難しいでしょう。
特にインターバルとタイムトライアルはバリエーションも豊富になってきます。
短距離が得意な中距離選手、スタミナに自信のある中距離選手…短距離タイプか長距離タイプかによっても変わってきます。
いずれにせよ、400m53秒、1000m2分40秒は最低ライン。
そこをクリアしたうえで、スタミナを落とさずにスプリントを磨くか、スプリントを殺さずにスタミナをつけるか、或いは両方を磨くことになります。簡単ではないのは確かです。


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